我、戦場に赴けど

我、戦場に赴けど

いざ戦場へ

どうも、かなり間が空いてしまったので恥ずかしながら連投させて頂く
今回は久々の2%オジ史だ

前回はキャンセルを理解したところまで話したと思う
波動拳、昇龍拳そしてキャンセルと格ゲーの基礎を覚えたあと直ぐに私は中学生になった
小学校は私学だったが中学は公立になった為完全なアウェーに乗り込む形だ

どうやらエリート風の何かを作りたかった両親は私学からドロップアウトした私を再校正したかったようですぐさま高校受験の為に塾にぶち込まれた

これが良くなかった

通う事になった塾は自宅がある駅の一つ隣の駅だった
比較的駅間が近かった事もあり電車ではなく自転車で通う事を選んだのだが、塾自体には駐輪スペースが無く皆もっぱら道路を挟んだ向かい側のビルに止めていた

駐輪場と言うほどでもないが1、2Fがテナントになっており3F以上が集合住宅になっているタイプの建物で、自転車を停める為に入り口前には少し広めにスペースが取ってあった

戦場を認知

それは塾に通い始めて比較的早い段階で訪れた
確か6月中頃だったように思う
いつものように学校から帰宅し塾までの間暇でも潰すかと思ったが空模様が怪しかったので早めに出る事にした
すると、間もなく塾というところで雨につかまってしまった

突然バケツをひっくり返したような大雨に襲われビショビショになった私は例の駐輪スペースに自転車を置くや否やビルに駆け込んだ

通い始めて一月半ほど経ってはいたがそのビルに入ったことは無かった
今のように天井が高い作りではなくジャンプをすれば触れるほど低い天井の通路が奥まで続き突き当りは観音開きのガラス戸で裏通りへつながっていた
その通路の両側に店舗がある作りだ

入ってすぐにあったのは町のスポーツ用品店で運動部と思しき学生が出入りしていた
ビショビショになった私はその店でスポーツタオルを購入し、頭をワシャワシャ拭きながら建物の奥へ進んだ
早めに出た為時間が少し余っていたのだ

スポーツ用品店の間仕切り壁が切れた先は何やら少し薄暗かった

あの先は何だ?

そう思うや否や、聞き慣れた声が聞こえた

ハドーケン!!

その薄暗い空間には画面の手前にレバーとボタンの付いた筐体が大量に並んでおり、その中の一台で誰かがスパ2Xをやっていた
そう、ゲーセンである

終わりの始まり

ゲーメストで何度も文字で見てきたゲーセンがそこにはあった
横浜生まれなので五番街にそれがある事は知っていたが中に入る事はなかった
オジキから「あそこは悪の巣窟だから立ち入るでない」と教わっていたからだ
(蛇足にはなるがオジキがその「悪」寄りの若者だった事を後に知る事になる)

ここはあの悪名高いゲーセンじゃないか!!

一瞬パニックにおちいったが大好きな格ゲーの音が聞こえた事もあり好奇心が勝った
しかしながら薄暗い雰囲気とオジキの脅しもあり多少ビビッてはいたもののそれはすぐに解消された

スパ2Xの台に座っていた人物が私と同じ中学の制服を着ていたのだ

背もそんなに高くないし制服も真新しかった為恐らく同学年だろう
彼はリュウを使ってプレーしていた
途中視線が気になったのか彼が一度振り向いたが、お互い認識していなかった為特に会話も無かった

授業の時間も近づいていた事もあり、後ろ髪を引かれながらも塾へ向かった
塾が終わるころ1F入口はシャッターが下りており続きを見る事は出来なかった

翌日も塾だった
今までならギリギリまで家で遊んでから向かっていたが昨日の事が忘れられずその日も早く出た
店につきスパ2Xの台に向かうとまた彼が座っていた
この時彼の座っている側の2Pレバーとボタンが埋められていた為ゲーセン初心者な私は一人専用台と誤認しひたすら彼のプレーを見ていた

乱入されているにも関わらず

それからしばらくは早めに行き彼のプレーを見るのが習慣になっていた
その年の夏休みは家庭の都合で関東に居なかった為全く行く事が出来なかったが、休みが明けた9月初旬から再度見に行っていた

そんな事を続けていたある日彼に声をかけられた
「やらないの?」
後に私は知る事になる
これが実は友好のきっかけではなく、その日乱入者が少なかったが故の生贄探しだったという事を・・・

血のにほひ

突然の声掛けに面食らったが、彼の誘いに乗る事にした
最初こそ一人専用台と誤認したものの乱入の段取りはそれとなく理解していたので対面の台に座り50円をそっと投入した
スタートボタンを押しレバーを・・・

レバー?

これあれか、ゲーメストで見たあれか
どう使うんだ?
スーファミでデビューし、スーファミで育った私はそんなものの使い方は知らなかった
上からか?
真上からがっしり握る
うむ、今なら分かる、それではシフトレバーだ

左手をぎこちなく動かしながら力士にカーソルを合わせる
未知なる入力デバイスで波動拳を出せる自信が全くなかったので連打で何とかしようと思ったのだ
私の力士が血だるまになるのに1分も必要なかった

何もできなかった
技が出るとか出ないとかではなく、全くの異次元だったのだ
CPU戦、友達との遊びとは完全に異なる世界

・・・てぇ

勝ちてぇ・・・

この日2%オジは「確実に」危険な領域に足を踏み入れてしまった
スーファミの比ではない
試合時間はそのまま50円を溶かすのに要した時間だ
私はその時1分未満で50円を溶かした事になる

これはゲームなんかじゃない
命のやり取りだった

命のギャンブル

そう、これは遊びではなかった
リアルマネーが溶けるギャンブルだ

強い者は50円で1時間遊び
弱い者は50円を45秒で溶かす

前者になる為には知識を増やし、技術を磨く必要があった
勿論それもより知識があり、より技術の高い者には刈り取られてしまう
努力を介在させることは出来るが相手のレベルが分からない、選べない為ギャンブルという訳だ

今となって思えばとんでもない世界に足を踏み入れてしまった訳だが
当時は完全にワクワクが勝っていた

この後大量に50円を溶かすことになるとも知らず・・・

少し長くなってしまったがこれが戦場デビューした日のエピソードである
この後彼とは今に至るまで、およそ生涯のゲーム仲間となる訳だがその話はまた別の機会に

ではまた

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